はじめに
このブログでは、全く電気に馴染みがない方にもできるだけイメージを掴んでいただき、感覚的に分かって頂けることを目指しています。
そのため説明が抽象的になってしまう部分が多々あり、理論的な説明としては不十分になるかもしれません。ここに書いてあることで気になったことがあれば、ご自身で詳細を調べて理解を深めることをお勧めします。
『興味はあるけど、自分にはできない』と思っている方が、『やってみたい』と思うきっかけになれれば嬉しいです。
雰囲気をイメージしていただいて少しでも興味を持ってもらえることを願って、出来るだけ簡単な説明を心がけます。分かりにくい点や誤りがあれば遠慮なく指摘いただけると幸いです。

(※電気を取扱うので当然危険が伴います。やってはいけないことや電気の安全な取扱い方法について十分理解して自分の身は自分で守ってください。当サイトによって発生した事故、あらゆる損失について当方では、いかなる補償もできないので、やるなら自己責任でお願いします。命に関わることもあるので十分注意してください。)

電気といえば、電圧、電流、インピーダンスとかL負荷とか用語出てきて、頭が痛いという方もいらっしゃるかと思います。
確かに最低限の知識は必要になりますが、そんなにしっかり詳細を理解する必要はありません。個々の部品がどんな動きをするかさえイメージできれば中身はブラックボックスとして構いません。
覚えておく公式はオームの法則だけでいいです。

オームの法則: 電圧 = 電流 × 抵抗

オームの法則はよく水道に例えられますが、これがイメージとしては掴みやすいと思います。
電圧:水圧
電流:流れ出す水量
抵抗:蛇口

水圧が高いほうが勢いよく水が流れ出しそうですよね。
蛇口が開いているほうが、流れ出す水量は多くなりますよね。
オームの法則もこれと同じことを意味しています。

交流 =ある一定の周期で電圧・電流の向きが変化する。
行ったり来たりする波のイメージ
直流 =電圧、電流の向きが一定で変化しない。
水道の蛇口のイメージ
インピーダンス =交流での抵抗を意味します。
L(インダクター) =交流(高周波になればなるほど)抵抗が大きくなる部品
C(キャパシタ) =Lとは逆で高周波になればなるほど抵抗が小さくなる部品

直流でのインピーダンスは抵抗成分(R)しかありませんが
交流ではL、Cが抵抗のような働きをします。

新しい部品が出てくるたびにイメージを説明していくので
少しずつ掴んでいただけたらと思います。


オーディオアンプはこれで4作目となります
1~3作目については分解してしまったので、ここには4作目から上げます

2013~14年頃に製作しました。
名称のLCPAはLinear Current-Power Amplifierの頭文字を取ってます
コンセプトは電流帰還型電流検出です。

「電流帰還型電流検出」については後々説明するとして、少しだけ理論的な話をすると、
オーディオアンプの負荷は当然スピーカーです。
スピーカーはL負荷(コイル)で、インピーダンスは8Ωが一般的です。

そして市販のパワーアンプは、そのほぼ全てが電圧検出型です。
要するに、アンプの出力端子間の電圧を検出(フィードバック)して、出力電圧が入力電圧の何倍かになるように制御されたものをいいます。
この"何倍か"というのを調整して音量をコントロールします。

ここで、中学か高校の理科で習ったはず?のフレミングの(左手の)法則を思い出してください。
左手の親指、人差し指、中指をそれぞれ直行させて中指から順に、電→磁→力として覚えたあれです。
簡単に言うと、「磁界の中で導体に電流を流すと、その向きに応じた力が働きますよ」という法則です。 この法則をそのまま利用したのがスピーカーです。
ここで注目したいのが、フレミングの法則で"電圧"という言葉は一切出てこないことです。
そう、スピーカーを動作させるのに電圧は直接関係ないのです。
ではどうしてスピーカーに電圧をかけたら音が鳴るのか?
それはスピーカーにインピーダンス(抵抗)があるからです。
そのインピーダンスと印加された電圧がオームの法則によって電流に変換されます。
その電流と磁石から発生する磁界によって生じる「力」が音として伝わってきます。
(スピーカーの動作原理について、詳しく知りたい方はGoogleさんに聞いてみてください。)

一見、それなら電圧検出でも問題ないじゃないかと思うかもしれません。
そう言われればそうなんですが、もう一度言います、スピーカーはL負荷です。
L負荷は周波数が高くなればなるほどインピーダンスが高くなります。
つまり、同じ電圧を印加しても周波数によって流れる電流の量が変わってしまうんです。
電流の量が変わるということは発生する力の量(音量)も変わります。
スピーカーによって、低音向きだったり、高音向きだったりするのはこれが一つの要因になっています。
上の図はGreat Plains Audioと言うメーカーの3154というスピーカーユニットのインピーダンス特性です。
横軸は周波数の対数表示で縦軸がインピーダンスです。
このユニットの公称インピーダンスは8Ωですが、図を見ると、8Ωになっているのはごく一部で、周波数によってインピーダンスが結構変わっていることが分かります。
どんなスピーカーユニットでも、これと同じように周波数によってインピーダンスが変わります。
2本の線のうちFREE AIRのほうのカーブを見てください。
25Hz付近で山がありますよね、この山の頂上に当たる周波数を最低共振周波数と言います、しばしばfsと略されます。スピーカーはこの最低共振周波数以下の周波数は再生できないとされています。
人間の音として聞こえる領域(可聴領域)が20Hz~20kHz(20000Hz)と言われているので、このユニットは可聴領域の下側をほぼカバーできると言えそうです。
実際のところfs=25Hzのユニットはかなり珍しいです。大体低くてもfs=40Hzくらいまたはそれ以上のユニットが多いです。
上の図が周波数と音圧(Sound Pressure Level)との関係です。
このユニットは50Hz~1kHz(1000Hz)の範囲で90dBを少しこえてフラットです。
スピーカーはこのフラットの部分でしか使えません。
"dB"と言う表記ですが、ある電圧を入力したときのスピーカが出す音の大きさだと思ってください。当然、ものによってこの値は変わります。大体80dB~90dBのものが多いですが、同メーカー(GPA)には100dBを超える化け物ユニットもあります。
実際どれくらい音量が変わるかと言うと、20dBの差で10倍、40dBで100倍、60dBで1000倍の音量差です。100dBと80dBのユニットでは比べ物にならないくらい音量差があるのが分かりますね。

ここで、50Hz~1kHzなら可聴領域全体をカバーできていないのでは?
と思った方、鋭いです。
そう、このスピーカー1つでは可聴領域全てをカバーすることは出来ません。
このスピーカーはウーファーと呼ばれるユニットです。
ウーファーは低音領域は得意ですが、高音は再生することが出来ません。
これはスピーカーの形状や大きさ、コーン(振動体)の質量や材質などの物理的な要因に起因するものなので、どうすることも出来ません。
一般にスピーカーはウーファーに高音の再生が得意なユニットを組み合わせて使われます。
その辺に売っているスピーカーで1つの箱に2個も3個も違う形のスピーカーが付いているのを見たことはありませんか。それはこういった事情があるからなんです。
スピーカーユニットは、その得意な再生領域ごとに大体名前が決まっていて
低音域:ウーファー
中音域:スコーカー、ドライバー
高音域:ツイーター
と呼ばれ、また、その中でもいろんな種類に分かれます。
また可聴領域のほぼ全てをカバーするフルレンジユニットというものもあります。

市販されているスピーカーシステムは、箱を工夫したり、イコライズしたり、スピーカーユニットの組み合わせなど、さまざまな工夫がされており、どの周波数(音の高さ)でも同じ音量になるように調整されています。
十分調整されていないシステムだと、低音が物足りないとか、中抜けだとか、こもった音に聞こえたりします。
そして厄介なのが、スピーカーユニットごとに周波数特性が異なるのでアンプとスピーカーの組み合わせによって音の印象が物凄く変化します。
これがオーディオが奥深いとされる要因の一つではないでしょうか。
だから高価な部品を買って取り付けたからと言って必ずしも音がよくなるということはありません。
これが分かっていないと高価な部品を使えばもっとよくなる、もっと、もっと、っと底なし沼のように
私財を投じることになってしまいます。
実際にオーディオマニアと呼ばれる人にはこうやって泥沼にはまっている人が少なからず居るようです。

本人が好きで金を使っているんだし、確かに人によって好みの音があると思うので否定するつもりはありません。
でも、人間は自分が理解できないことに関しては、時にオカルトに走ることがあります。
残念ながらオーディオの世界にはオカルトを巧みに利用して不当な金額で売られている機器、機材がたくさんあります。
何でそうなるか理論的に説明されていて、自分が理解できたもの以外は買わないほうが身のためです。
とは言っても所詮趣味なので、金の使い方について外野がどうこう言うのは野暮ですし、気に入ったものがあれば買えばいいと思います。

市販のアンプが電圧帰還タイプであることは前述の通りです。
それに対して今回のコンセプトの電流検出タイプは、実際にスピーカーに流れる電流を検出して、その電流量を制御してやることによって、スピーカーの非線形な特性に影響を受けることなく、どの周波数に対しても線形な電流を流して入力された音声信号に対してフラットで忠実な特性を得ようと言うのが目的です。

電流を検出する方法は特に新しい発見でもなく、昔からある手法ですが、一般的なアンプで採用されにくい理由があるんだと思います。
それは、おそらくL負荷に対して電流をフィードバックする方法は動作が不安定になりやすいからじゃないでしょうか。
動作が不安定になると発振して最悪の場合スピーカーやアンプを破壊したり、人体に悪影響を与える危険があります。また、オーディオの特性上アンプの出力につながる負荷(スピーカー)の特性が様々なのでその全てにおいて品質を保証するのが難しい為だと思われます。
(それ以外にも理由はあるかも知れませんが・・・・)

なので、こういうことは自作だからこそできることなんです。
失敗することもありますが、これが自作する醍醐味で、楽しさでもあります。

では、次のページから製作例を少しずつ紹介していきたいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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