■電源回路の構成(続き)

-平滑部-
ブリッジダイオードで全波整流したVoutの波形は山と谷があり、まだDC電源とはいえません。
DC電源にするためには、この山と谷の差を平滑部で小さくする必要があります。
平滑回路にはコンデンサ(キャパシタ)を使用します。
コンデンサは「電荷」を溜める事ができる部品で、「電荷のバケツ」と考えてください。
電荷は電流の素になる粒で、電荷が溜まると電圧が上がり、電荷が移動すると電流が流れると表現します。
コンデンサの種類と特性、用途については別ページでまとめるとして、ここでは電解(アルミ)コンデンサを使用します。
電解コンデンサの特徴は
・大容量
・極性があり、プラスとマイナス端子に逆電圧を印加すると爆発する。
・比較的耐圧が低い
・寿命が短い(5000Hr程度)
・ESR(等価直列抵抗) =大
・暗電流、自己放電 =大
です

回路記号は右の図のように表します
並行平板に端子が付いているのがコンデンサのシンボルで、特に電解コンデンサは平板の間に斜線を書いて、極性を示す"+"が明記されます。

全波整流に平滑コンデンサを追加した回路は下の図のようになります。
全波整流+平滑回路
整流電圧波形の山のときは、C1に充電電流が流れ、容量に電荷が充電されます。
次に、整流電圧が谷のときは充電されたC1からR1に負荷電流を供給し、その電流量に比例してC1両端の電圧が徐々に下がっていきます。
そしてまた山が来たときにC1に充電され...という動作が繰り返されます。
シミュレーション波形の赤線がC1に流れる電流の波形です。
プラス方向が充電、マイナス方向が放電を意味しています。
充電電流は急(大電流)であるのに対して、放電電流は緩やか(少電流)です。
AC電源は電圧が高くなったり低くなったり常に変動していますが
平滑回路(コンデンサ)は電源電圧が高くなったときに一気にコンデンサに充電して
電源電圧が低い間は充電されたコンデンサが電源の代わりに負荷に電力を供給することで、電圧の変動幅を小さくする回路です。

やっとDC電源らしくなってきましたが、まだ少しだけ電圧が上下しています。
この電圧の上下をリップル電圧といい、全てのDC電源にリップル電圧が含まれています。
もちろんリップルは小さければ小さいほど良いので、電源構成最後の「安定化回路」でリップルを小さくします。

-安定化回路-
安定化回路は、レギュレーター回路で実現できます。
レギュレータ回路には、
シリーズレギュレータと呼ばれるタイプ
シャントレギュレータと呼ばれるタイプ
の2つのタイプがり、それぞれどういう動作をしているかというと、
どちらのタイプも常に出力側の電圧を監視していて、出力電圧が希望する電圧より高いときは電圧が下がるように、逆に電圧が低いときは電圧が上がるように調整弁で電圧・電流を調整しています。

シリーズレギュレータは電源と負荷の経路に直列に蛇口(調整弁)を挿入して、直接電圧を絞っています。ここで絞られた電圧は全て損失として調整弁で消費されます。
電圧が消費されるだけなので入ってくる電流と出て行く電流は同じになります(Iin=Iout)
ちなみに"シリーズ"という言葉には"直列"という意味があります。

他方のシャントレギュレータは、出力端子とGNDの間に弁が入っていて、出力電圧が所望の電圧になるように不要分の電流を捨てます。
電流を捨てた分の電圧降下が制限抵抗で発生するので出力電圧が下がります。

両者の共通の特徴は、電力を損失させて所望の電圧に絞っていることです。
電力損失させた分は全て調整弁または制限抵抗で熱として消費されるので、大きな放熱フィンが付いているのが一般的です。

シャントレギュレータタイプは制限抵抗で電源が出力できる最大電流が制約されますので電力供給用の電源としてはあまり使えません。
その反面、低リップル・低ノイズにしやすいので、基準電圧電源などに用いられます。
シリーズレギュレータとシャントレギュレータ
下の回路はリニアテクノロジー社の3端子レギュレータ(LT1086-12)を使った安定化回路です。
3端子レギュレータICの中にはシリーズレギュレータタイプの回路が入っていて、出力電圧が一定になるように制御されています。
シミュレーション波形を見ると出力電圧が12Vで一定になっているのが分かりますね。
3端子レギュレータの内部回路についても説明しておきたいのですが、長くなるので割愛させていただきます。
無論、3端子レギュレータICを使わなくても安定化回路は実現できますが、その説明にはトランジスタやオペアンプの動作を理解しておく必要があるので、ここでは割愛させていただきます。
後々、トランジスタ、オペアンプを紹介する際に詳細を書きたいと思います。

次の電源part3ではLCPA01pの電源回路を紹介します。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


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